西森さんと瑠愛くん。(仮)
「モモちゃん」
ふっと意識が浮上して、瞳が光をとらえた。
景色が滲んで、よく見えない。
「モモちゃん?」
声がする方を見ると、永峯君が私を見ている気がした。
ぼやけてハッキリしない。
寝起きなのを差し引いても、どうしてこんなに焦点が合わないのだろう。
「どうしたの? 怖い夢でも見たの?」
白い何かに、交互に目元を覆われると、視界が良好になった。
同時に、見通しを妨げていたのは涙だった事と、それを永峯君が払ってくれた事を認識した。
「………大丈夫………」
心配そうに眉を顰める永峯君に頷いて、私は残りの涙を自分で拭った。
「本当に大丈夫……?」
信じてくれないチワワの怯えた顔に、私は少し、口角を上げてみる。
「平気……ゾンビに爪先から食べられる夢を見ただけ」
痛みがもの凄くリアルでね・・・。
私がそう言うと、永峯君は想像したのか、うえぇと情けない声を上げた。