西森さんと瑠愛くん。(仮)
「寝てるのに、急に泣き出すから……ビックリした」
想像の中のゾンビを払い落とすかのように二、三度軽く頭を振って、永峯君が言った。
「ごめんなさい…」
小さく謝った私に、彼は首を横に振る。
「謝る事じゃないよ。でも、女の子に泣かれるのは、ちょっと苦手…」
困った顔で笑う永峯君に、ふわりと頭を抱かれ、彼のそれにコツンとぶつかる。
控えめなコロンと、微かな潮の匂いがした。
「怖いの怖いの、飛んでけ~」
ポンポンと頭を撫でられて、不思議と胸の辺りがじんわり熱くなる。
とても久しぶりに、他人の温もりを感じた気がした。
「……………わっ! ごめんっ、嫌だったよね?!」
しばしそうしたかと思うと、永峯君が慌てて腕を放す。
温もりが急にスッと遠くにいってしまって、名残惜しい気持ちになる。
「………チワワなら平気」
今度は、無理に引き上げなくても、頬が緩んでいた。