西森さんと瑠愛くん。(仮)
「西森さんは、不細工じゃない。私みたいなの、でもない。それだけは言いたかった」
顔を上げると、端正な顔を引き締めた、真剣な眼差しの彼に見つめられる。
ドキリ、と鼓動が一度、大きく波打った気がした。
「………そう………?」
上気するのが自分でもわかって、すぐさま視線を床に落とす。
素っ気なく返すと、永峯君は私の巻かれた毛先を指ですくい、クルクルといじり始めた。
真剣だった表情は、また元のチワワに戻っていた。
「うん」
短い返事の後、あっちをクルクル、こっちをクルクルし始める。
撮影の前に、髪型を直してくれているのだとわかった。
「……俺の初めてのプリクラが、西森さんと一緒で嬉しいよ」
普段のあの、王子様オーラを振り撒きながら言いそうなセリフ。
けれど、今の永峯君には、そんな余裕のようなものは感じられなかった。
だからなのか、私の心にも、スッとそれが馴染んでいった。