西森さんと瑠愛くん。(仮)

~レトリバーは。

 

「るぅ様だ!」


 四苦八苦した撮影後の落書きコーナーから出ると、同じ学校の女の子たちに出くわした。

 プリクラを撮るために帽子を取り、そのままだった永峯君は、やはり目につきやすかった。

「こんにちは♪」

 一瞬にして王子様モードになった彼は、私を背後に隠すように前に出る。

「るぅ様に会えるとかラッキー!」

「何してるの? 一人?」

 猫なで声をあげながら、女の子たちがワラワラと集まってきた。

「うん、ちょっとね♪」

 どんどん女の子たちが寄ってくる。そして、永峯君の背後にいた私を見つけたらしい。

「え。何、その子誰?」

 控えめに身体を小さくしていたが、この距離では意味がなかった。

「……今、この子とデート中☆」

 観念するしかなかった彼は、わずかに顔を引きつらせて、それでも王子様モードを崩さなかった。

「ウチの学校にそんな子いたっけ?」

「他の学校の子?」

 途端に質問責めに遭うが、永峯君は普段通りに女の子たちに対応する。
 
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