西森さんと瑠愛くん。(仮)
「ねぇ、瑠愛! いつまでアタシをほっとく気なの?」
短い人生の中で出した事のない何トーンか高めの声で言うと、キョトンとした永峯君と、眉間にシワを寄せた女の子たちの注目の的になる。
「えっ……あ、ごめん」
私の意図を知らないレトリバーは、チワワの顔に戻りそう言った。予想もしていなかった事に、思わず素が出たのだろう。
「アタシお腹空いたぁ。クレープ食べたい! もう行こうよぉ!」
言ってる自分で自分の声とテンションに鳥肌を立てながら、永峯君の腕に絡み付き、外に出ようと促した。
「えっ? あ、うん、ごめんね。じゃあみんな、またね~」
強引に連れ出されながら、彼は女の子たちにヒラヒラと手を振り、帽子を目深にかぶり直した。
「何あの女~~~っ!!」
後ろから憚る様子もない彼女たちの斉唱が聞こえたが、気にしない。
慣れっこだから。