西森さんと瑠愛くん。(仮)
「………あ、あの、西森さん?」
戸惑うしかない永峯君がこちらを見た。私は人差し指を鼻の前で立てて見せる。
「もう少しこのまま。まだ見られてるから」
トーンを戻した声で言って、また少し彼に寄ってみせる。
後ろを確認したワケではないが、お陰様で特化した背中の視線をキャッチするセンサーが、見られていると告げている。
「う、うん……」
「………何? あのままあの子達とイチャつきたかったの?」
「違うよっ。そうじゃなくて……西森さんあんな声出るんだね」
意外そうに目を丸くしたチワワに、赤面してしまった。
「あれはっ! 永峯君の顔が引きつってたから、助けなきゃって……バカッ……」
角を曲がり、人混みが増えた中に溶け込むと、センサーはもう大丈夫だと言った。
私は永峯君から離れ、恥ずかしさから早足になる。
「待っ、待ってよぉ!」
甘えるような声をあげて、彼はすぐに追いかけてきた。