西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
「………あ、あの、西森さん?」

 戸惑うしかない永峯君がこちらを見た。私は人差し指を鼻の前で立てて見せる。

「もう少しこのまま。まだ見られてるから」

 トーンを戻した声で言って、また少し彼に寄ってみせる。

 後ろを確認したワケではないが、お陰様で特化した背中の視線をキャッチするセンサーが、見られていると告げている。

「う、うん……」

「………何? あのままあの子達とイチャつきたかったの?」

「違うよっ。そうじゃなくて……西森さんあんな声出るんだね」

 意外そうに目を丸くしたチワワに、赤面してしまった。

「あれはっ! 永峯君の顔が引きつってたから、助けなきゃって……バカッ……」

 角を曲がり、人混みが増えた中に溶け込むと、センサーはもう大丈夫だと言った。

 私は永峯君から離れ、恥ずかしさから早足になる。

「待っ、待ってよぉ!」

 甘えるような声をあげて、彼はすぐに追いかけてきた。
 
< 83 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop