西森さんと瑠愛くん。(仮)
「………ありがと、モモちゃん」
並んだ私の顔を覗きながら、永峯君はしなやかに笑った。
「………別に」
やっぱり素直になれず、まだ恥ずかしかったのもあり、あさっての方を向いた。
「最優秀主演女優賞ものだったよ」
今度は照れている私をからかうように、彼は笑った。
「………橋の下に捨ててくわよ」
「それだけは嫌だワンッ」
チワワになりきる永峯君に不意をつかれ、ふふっと笑いが零れる。
「もう……乗らなくて良いのよ?」
「え~、良いじゃん。俺、気に入ったよ? 西森さんが飼い主で、俺がチワワ」
「……私、飼うなら柴犬が良いわ」
「えーっ! そこはチワワにしてよっ!」
永峯君が本気でガッカリする様子に、また笑いが零れ落ちた。
あぁ、楽しいな・・・。
素直にそう思えた。