西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
「………ありがと、モモちゃん」

 並んだ私の顔を覗きながら、永峯君はしなやかに笑った。

「………別に」

 やっぱり素直になれず、まだ恥ずかしかったのもあり、あさっての方を向いた。

「最優秀主演女優賞ものだったよ」

 今度は照れている私をからかうように、彼は笑った。

「………橋の下に捨ててくわよ」

「それだけは嫌だワンッ」

 チワワになりきる永峯君に不意をつかれ、ふふっと笑いが零れる。

「もう……乗らなくて良いのよ?」

「え~、良いじゃん。俺、気に入ったよ? 西森さんが飼い主で、俺がチワワ」

「……私、飼うなら柴犬が良いわ」

「えーっ! そこはチワワにしてよっ!」

 永峯君が本気でガッカリする様子に、また笑いが零れ落ちた。


 あぁ、楽しいな・・・。


 素直にそう思えた。
 
< 84 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop