西森さんと瑠愛くん。(仮)
「でも、永峯君にはそれ以上に……」
「まぁまぁ、お弁当作って来てくれたの? 大変だったでしょう。それなら尚更よぉ」
1人分増えたって構わないわよ~。
そう言うと、椿さんは嬉しそうにダイニングへ戻って行った。
・・・少々強引なところも、似ているらしい。
「……遠慮しないで。ホント、今日はありがとう」
ポカンとしてしまった私の手を、永峯君が引いた。
「とりあえず、着替える? さすがに寒いよね」
道中で、日が暮れて肌寒くなった事もあり、彼が貸してくれた上着を羽織っていた。
7分袖とはいえ、この季節の夕方の寒さは、ワンピースの身体に大いにしみた。
「………うん」
けれど、何故か名残惜しい気持ちになって、引かれていた手を、軽く握り返す。
すると、驚いた顔が、こちらを向いた。
「………何?」
私には、永峯君が驚いて、僅かに頬を染めている理由がわからない。
「………ううん」
何でもない、という風に返して、彼はまた歩き出した。