西森さんと瑠愛くん。(仮)
 
 洗面所に導かれ、きちんと畳まれた自分の服を渡され、扉は閉まった。

 永峯君は自室で着替えて来ると言って出て行った。

 掃除が行き届き、綺麗に整頓された洗面所は、ほのかに石鹸の香りがする。

(………上着、後で返さなきゃ。椿さんにもお礼言わないと)

 もぞもぞと借りた上着を脱ぎ、オレンジ・ギンガムチェックのワンピースも脱いだ。

 着てきた元の服に袖を通し、乱れた髪を直すために、鏡を見た。

(……………変な感じ)

 眼鏡を外し、髪型を変え、少し肌を整え、リップを塗った。ただそれだけのハズなのに。

 鏡の中の自分が、自分でない誰かに変わってしまったような気がした。

 もっとも、今日一日で、永峯君への印象が完全に変わった事だけは確かだ。


 それだけ・・・?


 心の奥底で、じんわりと何かが私に問いかける。

 でも、私にはその何かが何なのか、わからない。


 私、こんな顔してたっけ・・・。

 
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