西森さんと瑠愛くん。(仮)

~帰り道。

 

 外に出ると、キンと冷たい夜の空気が、即座に頬を滑った。


 永峯家からの家路、送っていくからと、二人並んで歩いている。

「寒っ……」

 思わず声に出すと、次にはふわりと温かい何かが顔を包んでいた。

「ワンピースで風邪引いちゃった? 大丈夫?」

 どうやら、永峯君がしていたマフラーを私にかけてくれたらしい。

「………大丈夫、ありがと」

 そのマフラーに顔を埋め、くぐもる声で言ってみる。


 夕食の時も、こんな風にさりげなく先回りして気を遣ってくれた。

 顔ばかりでキャーキャー騒がれているワケでは無いのだと感じた。

 もっとも、自分以外は女しかいないという家庭環境で、意識せずとも身に付いたのだろう。


「………綺麗だなぁ」

 夜空を見上げている彼の声がして、私は同じように、空を仰いだ。

 秋に傾いた帳は澄んでいて、星の光が綺麗に並んでいる。

 ──星を見上げたのなんて、いつ以来だろう。
 
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