天の音
出会い

(ココは何処?)

目を開けるといつもと違う空気を感じ、身体を起こす。
布団に寝ていたようだ。


「目が覚めたのか?」

「はい。」

文机に向かい、筆を走らせる男性がいた。
着流し姿でサラサラと書物をしている。


「あの…」

「悪いが少し待って貰えねぇか?」

「あ…はい。」

目の前の男性に状況を尋ねようとしたが、待つように言われたので口を噤む。
部屋の中は、殺風景という言葉がぴったりな程だ。
だが、男性が向かう文机には竹で作った花瓶があり、梅が生けられている。


「具合はどうだ?」

ぼんやりしていると文机に向かっていた人がこちらを向いている。
涼しげで切れ長の目元が印象的な男性。
漆黒の髪は艶やかで男性なのに恐ろしく色気を感じさせる。

< 1 / 11 >

この作品をシェア

pagetop