天の音
出会い
(ココは何処?)
目を開けるといつもと違う空気を感じ、身体を起こす。
布団に寝ていたようだ。
「目が覚めたのか?」
「はい。」
文机に向かい、筆を走らせる男性がいた。
着流し姿でサラサラと書物をしている。
「あの…」
「悪いが少し待って貰えねぇか?」
「あ…はい。」
目の前の男性に状況を尋ねようとしたが、待つように言われたので口を噤む。
部屋の中は、殺風景という言葉がぴったりな程だ。
だが、男性が向かう文机には竹で作った花瓶があり、梅が生けられている。
「具合はどうだ?」
ぼんやりしていると文机に向かっていた人がこちらを向いている。
涼しげで切れ長の目元が印象的な男性。
漆黒の髪は艶やかで男性なのに恐ろしく色気を感じさせる。