天の音
何が異常はないだ。
あるじゃねぇか‼︎
「副長、このままでは彼女は…」
そうだ。
布団で落ち着かせたいが、怯えられたままでは何もできない。
近づくことさえできない状況だ。
どうする?
昔からの知り合いだという平助でさえ近づけない。
生憎、男世帯の屯所には女はいない。
女顔の総司なら…とも思うが、駄目だろう。
どうするか考えを巡らせていると、入口が騒がしくなった。
「ひっじかたさーん‼︎」
総司だ。
「近藤さんと一緒に帰って来ましたよぅ!出迎え無しですかぁ⁉︎」
相変わらず、神経を逆なでするような発言をする。
「トシ、ただいま帰った。」
近藤さんの声も聞こえる。
出迎えたいがこの状況を無視することも出来ない。
「斎藤、近藤さんと山南さんの出迎えを頼む。あとでここへ案内してくれないか?」
「御意」
斎藤は音もたてずに去っていく。
斎藤なら近藤さん達に状況を説明して、ここへ案内してくるだろう。
「平助、とりあえずこっちに来い。離れてやれ。落ち着かせるのが先だ。」
怯えた姫音になおも近づこうとしている平助を一旦、下がらせる。
素直に土方の後ろに下がる平助。
「姫音、布団へ戻れ。近づかねぇ。大丈夫だ。」