嘘と秘密~空白の恋~
「見たって何を?」


美羽の声はひどく冷たい。


怯みそうになるのを抑えながら答える。


「俺と本郷さんが…その…キスしているところ…」


美羽は無表情に無反応。


ヒューと風が通り抜けた。


「…見てないって言ったって嘘って分かるよね。…見たよ…。ちょうど、その瞬間だけ」


美羽は苦しそうに笑う。


こんな表情、見たことない。


「あー、あたしタイミング悪って思ったよ。それと同時にあたし、今までこんな奴のこと好きだったんだなって…」


美羽が横髪を耳にかけながら言う。


何度も何度もかけ直すから髪が少しクシャクシャ。


…何で分かったのかな…?


美羽は嘘つくときに横髪を耳にかける癖があること。


でも今となっては苦しいだけ。


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