エリート上司と甘い秘密~彼の正体は私の義弟!?~
「私も嘘かと思った。チンピラも『へえ~。そならそのおじき名前言うてみぃや。適当なこと抜かしとったら承知せんからな』ってすごむから、どうしようかと思ったのよ。でも『●●んとこのおじきや。今、電話しちゃるから、ちょっとまっとき』って沃野君、本当にポケットからスマホ出してどこかに電話して、『ほれ』って相手の耳元に持っていったの。そしたらチンピラ、目ん玉ひん剥いて震えちゃって、土下座してすんません!て。でね、」

母は興奮して話し続ける。

「ごめん、話についていけない。なんでいきなり広島あたりのやくざ言葉で、そのおじきって誰?」

「あー、おじきは僕のおやじの幼友達で、子供のころからよく知っているんだけど、とある組の次期総長と言われているらしい。若いころは親父と一緒に『仁義なき戦い』の映画とかにはまっちゃって、僕も子供のころからよくやくざ映画観させられたよ。あの、広島弁のやくざ言葉のセリフがかっこよくて見終わるとみんなして真似しちゃってさ。まさか本物のやくざになるとは思わなかったけどね。でさ、何かあったらいつでも連絡しろって言われていたからしてみたんだけど、思っていた以上の威力だったな。やっさん、すごいな」

「やっさん?」

「本名は安彦っていうの」と、母が答える。
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