エリート上司と甘い秘密~彼の正体は私の義弟!?~
「ふざけるんじゃないわよ!」

強力な平手打ちがテーブル越しに裕也の頬にかまされた。

「ぱしっ」という乾いた音が静かな店内に響く。

「あなたも殴ってやんなさいよ」

そう促されて葵はリサを見上げたが、固まったまま言葉も返せない。

「それじゃ、私が。これは上司として葵さんの分よ!」と、今度はグーで裕也の頬に一撃を見舞った。

見事なパンチだった。

「だ、大丈夫?」

痛みに顔をゆがめる裕也の頬をさやかの細い指が包む。

裕也は下を向いたまま「ごめん」とつぶやき、ただただしょんぼりしていた。

葵がもう一度リサを見上げて「有難う」と言うと、彼女はわずかに笑みを浮かべたが、その瞳には涙が滲んでいた。

きっと彼女は本気で裕也が好きだったのだ、と葵は悟った。

たぶん、私なんかよりずっと、ずっと。
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