エリート上司と甘い秘密~彼の正体は私の義弟!?~
静かに声をかけたつもりだったのに、それでも葵は、びくっと肩を震わせながら振り返った。

そして沃野の姿を認識するとすぐに前を向き、何事もなかったように再び歩き出す。

まるで物音に驚いて立ち止まった猫が、風の仕業だと理解するとまた普通に歩き始めるように。

話しかけられたくない、という壁を作っているのだろう。

「ミーコに会いに行かない?」

「………」

「行かない?」

「………」

「行かないか……」

「ミーコじゃない。ミーちゃんだよ」

葵の声がとがっている。それでも沃野はめげない。
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