エリート上司と甘い秘密~彼の正体は私の義弟!?~
「ミーちゃんに会いに行こう」

白いコートの袖から出ている手を握り、沃野は地下鉄のホームに向かった。

葵は抵抗しなかったけど、無言だった。

地下鉄で3駅、2人は何も話さないまま電車を降りて公園に向かった。

午後になって日差しが温かくなった分、風も吹いてきた。

時折強く吹く冷たい風が、もう冬はそこまできているのだと感じさせる。

「ごめん。傷つけるような真似をして」

葵はちらっと沃野をにらんだ。

「そうだよ、少しはリサさんと私にも気を使ってほしかった。私もだけど、きっとリサさんはもっと痛手を負ったよ。さやかさんだって急に他の女が登場したら気分悪いだろうし。沃野君、デリカシーなさすぎ」

そうかもしれない。

沃野はわざわざ見せなくてもいいそれぞれの傷口を、あえて見せつけただけだったのかもしれないと、素直に認めた。

傷ついた葵が自分のことよりも、リサやさやかの心配をしているというのに。
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