エリート上司と甘い秘密~彼の正体は私の義弟!?~
デスクに戻ってからも葵の胸はざわざわして落ち着かなかった。

仕事のメールを処理しようと思っても、企画書を作ってみようと思っても、何かしようとするそばから「1秒キッス」でふれた沃野の唇ばかりが思い出される。

「なんなの、あれは」

葵は軽く頭を振りながら、そしてドキドキする胸を手で押さえ「大丈夫、葵。落ち着け、葵」と自分を励まし、「あれはなんだったのか」冷静に考えてみようと試みる。

要するに沃野君はずっとアメリカに住んでいたから、
つまりアメリカナイズされていて、
だからアメリカ人の文化にどっぷり染まっているわけで、
となるとアメリカ人は日常的にあいさつでキスする人たちだから、
きっとあの一見非日常的な会議室での「1秒キス」もあいさつで、
きっと、きっと「お疲れ様、ちゅっ」みたいなノリなのだ、きっと。

と、まったく“要していない”理由をこじつけなんとか自分を納得させた。
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