エリート上司と甘い秘密~彼の正体は私の義弟!?~
GPS追跡に盗聴器、まるで探偵のような小道具を平気で使う沃野に少々引きながら、葵はぽかんと沃野の顔をみつめた。

「あなた、なに者?」

「三崎沃野」

「いや、名前を聞いてるわけじゃなくて……」

なぜにこれほど優秀なのに、日本語の理解能力が低いのだろうかと怪訝に感じながら
「どうして盗聴器とか使うわけ?」、と聞き直した。

するとさらに葵をびっくりさせるような答えが返ってきた。

「盗聴器は仕掛けたんじゃなくて、仕掛けられていたんだよ。以前、アメリカで盗聴器を仕掛けられていたことがあって、一応用心のために出社初日にオフィスの自分の部屋を探知機で調べたんだ。そしたらビンゴ!だったってわけ」

「誰がそんなこと……」

「リンダだろ、どうせ。たぶん僕が急にボブから呼び寄せられたから不安を感じて、ボブとの会話を聞きたかったんじゃないかな」

「でも盗聴される側だったなら、なんでファントムの打ち合わせの情報が入ったの?」

「あれはもともとボブと僕がスカイプで話していたことなんだ。ボブが『ファントムの案件をリンダに振った』っていうから、リンダが聞いていることを承知で『あんな面倒なクライアントを振られて大変だ。失敗したらまたリンダ念願のVP(バイスプレジデント)へのプロモーションが遠のくね』って話したら、憶測だけどリンダがビビって担当をリサにまわした」

「で、りさが私に回して……」
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