エリート上司と甘い秘密~彼の正体は私の義弟!?~
ズズズズズズ ズズズズズ……

裕也のスマホが鳴った。

テーブルについてからこれで4度目だ。

スマホを見てちらっと相手を確認し、そのままにしておいたのが2回。

「ちょっとごめん」とすぐにメールを打ち込み返信したのが1回。

今度はメールを読んで少し考え、やはり「ちょっとごめんね」と、短い返事を返した。

別にまだ特別な間柄ではないので「誰から?」と尋ねるのはいやらしい気がするが、でも本音を言えば「頻繁にメールしてくるのは誰?」、と聞きたい気持ちでいっぱいだ。

それでも、その後もズズズズズ……という振動音に気をそがれながらも楽しく会話は続き、そして10時になると「そろそろ行こうか」と、裕也は店員にチェックを頼んだ。

店を出て空を見上げると、いくつかの星が白く光っていた。

弱い風がお酒でほてった葵の頬を撫でていく。

葵は幸せな気分で駅まで送ってもらい、ちょうど来た電車に乗り込むと、すぐに裕也から「今日は有難う。楽しかった。またね」というメールが届いた。

葵のほろ酔いは電車に揺られながら、一層深くなっていった。
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