この気持ちをあなたに伝えたい
 最愛は汗を掻いてしまったので、シャワーを浴びたくなった。

「足音がかなり響いていたぞ? 近所迷惑になるだろ?」
「誰のせいだと思っているんだ・・・・・・」
「最愛」

 さっき礼雅の家で飲み物を飲んだのに、また喉が渇いた。最愛が鍵を使って開ける前に中から母が開けた。

「あら、礼雅君」
「こんばんは、最愛ちゃんを送るために来ました。それとこれ、面白かったです。ありがとうございました」

 先程と顔が全然違うので、最愛の目が細くなる。

「もういいの? 急がなくてもいいのよ?」
「いえ、もう観ましたから」

 ついこの間まで最愛も礼雅の胡散臭い笑顔に見惚れていたので、自分が情けなくなった。
 目を閉じていると、頭の上に礼雅の手が置かれる。

「おやすみ、最愛ちゃん」
「・・・・・・おやすみ」

 礼雅は母に頭を下げてから、踵を返して帰って行った。

「いつになったら、礼雅君を恋人にするの?」
「礼雅お兄ちゃんのことをそんな風に見ていない!」

 最愛は母に前にも同じことを言った。

「そうなの? その割にはよく家に行くわね」
「それは・・・・・・兄みたいな人だから」

 玄関の鍵を閉めてから、靴を脱いで部屋の中へ二人で入る。

「もし、最愛に好きな人ができたら、報告してね」

 母の願いに最愛はどうしても頷くことができず、鞄を置きに行くことを告げ、自分の部屋へ向かった。
 夏休みになってから、最愛と礼雅は久々に保が働く店で食事をする約束をしていた。
 礼雅が休みで、昼に行くことを提案したのだが、礼雅は用事があることを最愛に伝え、話し合いの結果、少し早い夕食を食べることにした。
 どんな用事なのか、最愛が興味を示しても、詳しいことは何も話さなかった。
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