この気持ちをあなたに伝えたい
 店内はポスターが貼ってあり、お洒落なテーブル席を選んだ。注文したものはこの店自慢のピザ。
 この店を好きになった理由が増えた。飲食店で重要とされる味が自分好みだった。 
 ピザを齧っていると、もう一切れのピザを食べるように勧められたが、二切れでお腹は満たされた。

「あはは、最愛も気に入ったみたいだね」
「またここへ来ようね」
「もちろん!」

 その頃、古霜先生は校内を歩いていた。教室を見ても、心の中にいる少女の姿がなかった。
 彼女に会いたいと思っていたときに古霜先生の肩を優しく叩かれた。

「お疲れ様、古霜先生」
「お疲れ様、角重先生」

 場所が学校でなければ、互いの名前を呼び合う。

「何だか苛ついているように見えて仕方がないわよ?」

 彼女に言ってほしくないことを言われたものの、顔に出さなかった。

「気のせいだよ」
「本当にそうかしら?」

 元恋人にそんなことを言っても通用しなかった。彼女と恋人になったのは高校生のときで、付き合おうと言ったのも、別れようと言ったのも彼女から。

「今から職員室へ行くの?」
「そうだよ」
「数人の女子達がいたわよ?」

 職員室は古霜先生がいないときでも賑やかで、本人がいたらもっと賑やかになる。

「可愛らしい子達が待っているなんて嬉しいな」
「フェミニスト」

 角重先生の言葉を古霜先生は気にすることなく、笑顔でかわした。
 昔から古霜先生は困った女の子がいると必ず助けていた。自分に気がある女の子にも優しくしていたし、からかうこともしていた。それを受けた女の子達は怒るどころか、照れながら受け入れていた。

「食事に行かない?」

 彼女に誘われたものの、古霜先生は行かないことを選択する。

「行かない」
「即答しないでよ」
< 131 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop