この気持ちをあなたに伝えたい
「急がないと先生が来ちゃうよ?」
「ファイト! 最愛ちゃん!」

 まだ半分も食べることができていなかった。箸を進めていると、チャイムが鳴ったので弁当を渋々鞄の中へ入れようとした。
 教室に入ってきた先生が教科書などを教卓に置いて、最愛を見た。

「珍しい。まだ食べていなかったなんて・・・・・・」
「すぐに鞄の中に入れます」

 いつもなら教科書やノート、筆記具をきちんと机の上に出しているのに今日はそれらが置かれていない。
 先生は小さな溜息を吐きながらも、弁当を食べる許可をくれた。

「二分で食べてしまいなさい」
「は、はい!」

 先生からの許しをもらえたので、喉に詰まりそうになったものの、完食することができて満腹になった。
 午後の授業を終えてさっさと学校を出る予定だった。実は母から化粧品を買ってくるように頼まれていたから。この日もいつものように古霜先生に見つからないように遠回りしながら帰ろうとした。
 だけど外へ出ようとドアを開けると、古霜先生と角重先生が話をしていた。急いでドアを閉めてから、再びそっと開けると二人は自分の存在に気がついていなかった。

「お前、今日は名波と一緒にいたみたいだな?」
「そうよ・・・・・・」

 仕事を頼んでいたことを言っても、古霜先生の顔は険しいまま。

「あいつと職員室を出てから、昼休みの間に一度も戻って来なかったそうだな?」 
「誰が言ったのかしらね・・・・・・」

 古霜先生の怒りに震わせた口調に驚いたのは最愛だけではなかった。角重先生も目を見開いて言葉を失っているようだった。

「何をした?」
「何も・・・・・・」

 話をしていただけだと告げると、古霜先生は質問を続ける。
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