この気持ちをあなたに伝えたい
 古霜先生が角重先生にキスをしたのは前に進めず、もがき苦しんでいる角重先生を解放したかった。
 それにあの場で頼みを聞かなければ、角重先生が最愛を傷つける可能性があった。
 最愛が傷つかないためにできることがあれば、何でもすることができる。
 自分は何も間違ったことはしていない。
 最愛が傷つく姿を見たくなくて、最愛を守るためだから、仕方なくやったこと。これで角重先生が最愛に何もしないことを信じて。
 だけど、実際はそうしたことが過ちで、未だに古霜先生はそれに気づいていない。
 数日経過するが、角重先生と古霜先生の噂は流れることはなかった。誰も二人がキスをしていたところを目撃していなかった。
 あの日から角重先生は最愛と話は一度もしていないものの、最愛を見る角重先生の表情は決して穏やかではなかった。
 古霜先生は最愛が怪我をしていなくても、風邪を引いていなくても、二人きりになろうとしてくるので、最愛はストレスが溜まっていくばかり。
 担任の先生に相談しようか、何度か考えていたが、口が軽くて、おまけに古霜先生のことを常に狙っている先生なので、それをすると、最愛が不利になる恐れがある。
 後日、最愛は古霜先生にまた見つかってしまった。
 自分は何もしていない。そう言いたげな笑顔でいつでも最愛を追いかけてきた。何度逃げても追いかけ回されて、人目につかない場所に古霜先生に無理矢理連れてこられた。

「・・・・・・どうして逃げるんだ? 俺はいつでもお前に会いたいのに・・・・・・」
「先生、私のどこが好きなのか教えてもらってもいいですか?」
「急にどうした?」

 古霜先生は少し狼狽してから、最愛が求めていない返事をした。

「恋人になることをはっきりと俺に言ったときに教える」
「だったらもういいです。次の授業が始まります・・・・・・」

 古霜先生が何か話そうとしていたが、最愛は気にせず教室まで走った。
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