この気持ちをあなたに伝えたい
 最愛が本音を言っても、まだ彼女達は疑っている。
 噂を一度でも信じたら、本当のことを言っても、なかなか信じてもらえない。

「・・・・・・本当に?」
「嘘じゃないよね?」

 噂がかなり広がってしまっているので、噂を信じる者が多い。

「もちろん。私、餌打君のことを異性として見ていないから」

 きっぱりと否定をすると、彼女達はもう一度、互いの顔を見合わせた。

「・・・・・・名波さん。携帯電話、持っている?」
「うん、鞄の中にあるよ」

 最愛が鞄の中から携帯電話を出して、美鈴の電話番号とメールアドレス、その他の情報を登録した。彼女達に一緒にお見舞いへ行くことに誘われたので、最愛は行くことに決めた。美鈴の家は学校から二十分かかるところにある。
 しかし、美鈴の家に行ったものの、本人は薬を飲んで眠ったばかりと言うことを彼女の母に聞かされて、そのまま駅へ向かった。

「名波さん、付き合ってくれてありがとう」
「ううん、こっちこそ・・・・・・」

 最愛のことを見ていた美鈴の友達は行く前より表情が少し和らいだ。

「また学校でね?」
「うん、またね」
「気をつけてね・・・・・・」

 彼女達と乗る電車が違うので、駅で別れて、先に来た電車に最愛は乗った。
 もっと警戒されて、話もまともにできないと思っていたけれど、そこまで彼女達の警戒心は強くなかった。
 電車の中から景色をぼんやりと眺めていた最愛はこれからどうするべきか、考えていた。
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