この気持ちをあなたに伝えたい
 その頃、餌打は古霜先生に会うために化学室に居座っていた。

「疲れたな・・・・・・」
「お前はただ、ここでのんびりしたいだけだろ?」
「わかった? 最愛はどこか行っちゃったからさ・・・・・・」

 化学室は遊び場ではないのに、それを餌打が理解しているのかどうか曖昧だった。
 最愛の名前が出てきたので、今は何をしているのか、古霜先生は考えていた。

「・・・・・・そんなに退屈なら、仕事を与えようか?」
「いらないよ、そんなもん。そんなことをするくらいだったら、遊んでいたいよ」

 餌打の女遊びはまだ続いているのだと考えただけで、古霜先生は頭が痛くなる。
 他の生徒がいてもいなくても、餌打はまるで自分の家のように寛いでいる。

「俺さ、ずっと最愛とどっか遊びに行きたいと思っているのに、本人となかなか遊ぶことができないんだよね」
「お前とは違って、忙しいみたいだからな」
「何それ? ひどいな・・・・・・」

 最愛に何度か遊びに行くことを誘ったが、忙しいことを理由に断り続けられていた。
 他の生徒達と遊んでいるのか、餌打は最愛がいない間に確認していたのだが、やはり断られていた。

「最愛と同じ大学に行きたいな」
「ちゃんと真面目に進路を考えろ」

 どんなに真剣に言っても、本人は全然真剣に考えていない。

「俺はいつだって真面目だよ」
「どこがだよ・・・・・・」

 餌打の成績はさほど良くないことくらい、古霜先生は知っている。
 もっとやる気を出したら、成績が上がるに違いないのに、餌打がやる気を出す可能性はない。勉強が嫌いで、赤点でなければいいと思っているからだ。

「昨日さ、苺果先生が生徒に告白されていたよ?」
「そうか・・・・・・」
< 159 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop