この気持ちをあなたに伝えたい
「断っていたよ。相変わらずモテるよね」
「本当だな」

 昔から角重先生は男に寄られていた。
 だけど、角重先生が一番求めていた人物は古霜先生だけだった。

「どうして苺果先生を捨てたのさ?」
「お前な・・・・・・」

 人聞きの悪い言い方をしてくるので、気分が悪くなる。

「最愛を好きになったから離れた?」

 餌打の質問に古霜先生は一瞬、言葉が詰まった。

「生徒として、好きだよ。何度も言っただろ?」
「隠すのが下手だな。もうとっくにわかっているのにさ・・・・・・」

 何度も最愛のことを話していたので、もう隠すことができなくなった。

「どうなんだ?」
「・・・・・・お前の言う通りだ。俺はあいつが好きだ」

 古霜先生は渋々自分の気持ちを認めた。

「やっぱり・・・・・・」
「だけど、苺果とは名波を好きになる前に別れた」
「よく別れたよね」

 古霜先生と角重先生がどれくらい仲が良かったか、餌打は知っている。互いの家に遊びに行くことや外でデートもしていたのだ。
 古霜先生はずっと角重先生を幸せにしたかった。
 だけどそれができず、結局、角重先生を傷つける形となってしまった。

「どこに惹かれたの?」
「教えてやらない。どこかの誰かさんと噂になっているしな」
「おい!」

 古霜先生はそれを餌打に教えることはなかった。それを教えて、餌打まで最愛のことを好きになってはいけないから。

「惹かれたところはたくさんある、本人だけに教えるんだ」
「それを聞いたら、夢中だろうな」

 そうなってくれたら、どれだけいいだろう、と古霜先生は思っていた。
 まだ最愛をそこまで好きにさせるには時間が必要だった。

「俺はそろそろ行くな。お前もいつまでもここにいるなよ」
「わかった、わかった」
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