この気持ちをあなたに伝えたい
　心を強く握られたような感覚が餌打を襲う。
　何も反論しなくなった餌打を見て、角重先生は確信したーー餌打が最愛のことを好きだということ。

「苺果先生、俺・・・・・・」

　餌打が話をしようとすると、角重先生はそれを邪魔した。

「安心して。誰にも話さない。圭にも、名波さんにも・・・・・・」
「・・・・・・本当に？」
「ええ、もちろんよ」

　それでも餌打は安心することができなかった。噂をする生徒達には冗談であることを言うように肯定していた。
　すぐに最愛が否定するから、今のところは誰も本気で信じる人達はそれほど多くはない。

「あなたはそれでいいの？　本当にいいの・・・・・・？」
「それってどういう・・・・・・」

　どういう意味かわからず、餌打は首を傾げる。
　わかっていないので、角重先生は改めて彼に質問をする。

「自分の本当の気持ちを好きな女の子に伝えないで、後悔しないの？」
「言っても意味がない・・・・・・」

　角重先生は心の中で思っていた。さっきは餌打と古霜先生が似ていることを伝えたが、それだけではなかった。
　ーー餌打は自分とも似ているところがある。

「良かったら、これからも私の話をこうして聞いてくれる？」
「もちろん聞くよ」
「ありがとう。嬉しいわ・・・・・・」

　礼を言いながら、角重先生は餌打の手に自分の手を重ねた。その行為に驚いたものの、餌打が手を引っ込めることはなかった。
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