この気持ちをあなたに伝えたい
「うわっ・・・・・・いる・・・・・・」

 次の日の昼休み、中庭を通りかかろうとした餌打は美鈴を見つけて、舌打ちをしてしまいそうになったが、堪えることができた。
 それから美鈴が手にしている包みに目をやった。
 美鈴と付き合っていたときに何度か菓子をもらったことを思い出した。手作り自体に重く感じていたので、菓子をもらう度に良い気分にならなかった。
 美鈴が最愛に作った菓子を食べてもらうために作ったもの。美鈴は最愛が来るのを待っていて、腕時計で時間を確認していた。
 また同じ話を繰り返す可能性がある美鈴から、逃れるために餌打は足音を消して、その場から離れた。

「ごめんね、待たせて」
「汗を掻いている」
「走ったからね」

 餌打が離れた数分後に最愛も弁当と菓子を片手に走って持ってきた。美鈴と最愛は学食へ一度は行ったものの、席が埋まっていて、座ることができない状態だった。
 中庭へ向かう途中で最愛が菓子を教室に置いたままだったので、美鈴を先に中庭へ行かせた。

 時間より少し遅れそうになった理由は鞄の中に入れていた菓子が見つからなかったから。

「良かった、ちゃんと持ってきたね」
「約束したでしょ? 交換しよう」
「そうね」

 互いの菓子を交換した。最愛が作った菓子はクッキーで、美鈴が作った菓子はワッフルと蒸しケーキ。
 
「美味しそう。二個も用意してくれたんだね」
「そうだよ」
「ごめんね、私、一個しか作らなくて・・・・・・」

 美鈴は二個も菓子を作ってくれたのに、最愛は一個しか作らなかったので、申し訳なかった。謝る最愛に美鈴はゆっくりと首を横に振る。

「謝ることないよ」
「後でしっかりと食べるね」
「あたしも。さて、弁当を食べよう」
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