この気持ちをあなたに伝えたい
 中庭で弁当を食べることはあまりしない最愛だが、美鈴と仲良くなってからときどき中庭で食べるようになった。
 昼休みが終わる十分前にそれぞれの教室へ戻り、次の授業の準備をしているときに餌打が教室へ入ってきた。

「最愛! 俺、一緒に食いたかったのに・・・・・・」
「ごめん、餌打君は他の友達と購買へ行っていたの?」
「そうだ。勝負をして勝ったから、コーラを奢ってもらったんだ」

 餌打の話を聞くと、餌打の友達が好きな女の子に告白しようとしていることを知って、他の友達と恋人同士になるかどうかを賭けていたらしい。
 なかなか進展しないので、他の友達は断られるとばかり思っていたが、そうではなかった。

「そのことを恋人同士になった二人は知っているの?」
「まさか!」

 こっそり見ていたから、二人は知らないらしい。

「そうだったんだ・・・・・・」
「ああ!」

 餌打が出歯亀であったことを知ったのはこの話を聞かされたときだった。
 最愛が軽蔑していることを知らないので、勝負に勝ったことを誇らしげに話していると、クラスの男子が餌打に話しかけてきた。最愛は自分の席まで戻って、勉強をすることにした。

「さっき、何を話そうとしていたんだよ?」
「相談があるんだけれど、いいか?」
「珍しいな・・・・・・」

 いつも餌打にも悩まされている最愛は餌打が悩みを抱えるような人間と思っていなかった。
 何か嫌なことがあったとしても、笑い飛ばすか、自分の好きなことをして、最初から何事もなかったかのようにするから。

「どうしたんだ?」
「実はさ、五組の女子がしつこく俺に会いに来るんだ・・・・・・」
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