この気持ちをあなたに伝えたい
「・・・・・・最近、ちょっと面白い本を読みました」

 急に全然違う話を変えられて、古霜先生はすぐについて行くことができなかった。そんな古霜先生を放って、最愛は話を続ける。

「好きだからすぐに心を開くことは必ずしも自分のためにはなるとは限らない。時間をかけることで新たな発見を見出すことができるみたい」
「それを今も実行中か? それとも、もうすでに何かを発見した?」

 古霜先生の質問に対して、最愛は笑みを浮かべてはぐらかした。

「あの噂は真実ではないだろう?」
「彼から何か聞きました?」

 最愛の質問に古霜先生はすぐに返事を返そうとしなかったので、もう一度同じ質問をした。

「家に帰っても、最愛の話を積極的にするようになった」
「・・・・・・具体的には?」

 できるだけ言い方がきつくならないように注意をする。

「二人でどんな話をしたのか、どんなことをしているのかなど、とにかくいろいろだ」
「だから余計に嫉妬する・・・・・・」

 古霜先生はさらに強く抱きしめてくるので、最愛はそろそろここから出ることを考えていた。

「何を考えている?」
「今日、用事があるので、そろそろ失礼します」

 最愛が言った途端、古霜先生は機嫌を損ねる。

「・・・・・・何のだ?」
「久しぶりに会う友達と数日前から約束をしていたのです」

 古霜先生の拘束を解いた最愛は保健室を出ようとした。
 せめて一度だけキスをしたい気持ちになっている古霜先生は最愛に顔を近づけようとしたとき、耳元で大きな音が鳴った。
 
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