この気持ちをあなたに伝えたい
 数十分後、美鈴が一人で歩いていると、角重先生と餌打が廊下を通ってどこかへ行こうとしていたところを目撃した。

「・・・・・・あれ? どうして・・・・・・」

 珍しい組み合わせなので、美鈴は不思議に思った。

「こんな時間に・・・・・・どこへ行くんだろう? 仕事ではなさそうだし、本当に何なの?」

 気になったのでこっそりとついて行くと、学校の一番奥にある相談室へ入って行ったので、美鈴は見つからないように様子を見ていた。

「ドア、閉めなくて平気?」
「心配ないわ。誰もこんなところへ来ないから・・・・・・」

 会話からすると、人に近づかれることが嫌なことがわかった。

「それより早くして・・・・・・」
「ちょっと、引っ張らないで・・・・・・」
「早くしてよ・・・・・・」
「わかったから・・・・・・」

 美鈴が息を殺して見ていると、餌打は角重先生をソファの上に押し倒してから覆い被さり、角重先生は餌打の首に腕を巻きつけて、キスを強請った。餌打は荒々しく角重先生の唇に吸いつき、息が乱れていく。
 目の前で行われていることが信じられず、美鈴は自分の口を手で塞いだ。

「どうせやるなら、最後まで手荒くして・・・・・・」
「そのつもりだよ、苺果先生・・・・・・」

 餌打と角重先生の会話が途切れ、互いに貪り、何もかも忘れるように抱きしめて、キスを繰り返す。
 そんな二人を見ていた美鈴は足が凍りついたように動かすことができずにいた。
 真実を知った美鈴は餌打への愛情が完全に冷めた。悲しみが憎しみに変わり、角重先生にも嫌悪感を感じるようになった。
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