この気持ちをあなたに伝えたい
「最愛、誕生日プレゼントに何が欲しい?」
「現金」

 最愛のその一言に美鈴は眉間に皺を寄せた。

「もう少し可愛らしいことを言えないの!?」
「欲しいものは特にないからね」
「欲がないね・・・・・・」

 それは今まで生きてきた中で何度か言われたことがある。最愛自身、無欲だとは思っていない。

「最愛の誕生日はずっと先だから、じっくり考えることにするから」
「ふふっ、楽しみにしているね」

 その日は最愛と美鈴はそんな話を楽しんでいた。
 次の週の月曜日、掃除の場所が変わって、美鈴は階段掃除なので、階段へ向かおうとしたときに餌打がいた。
 本人は携帯電話で通話中だから、美鈴に気づいていない。

「苺果先生、いつものあの場所でだよね?」

 ぞっとして、美鈴は声が漏れないように自分の口元を手で押さえた。

「わかった。その日、終わったら行くから」

 振り向こうとしたので、美鈴は急いで餌打に見つからないように隠れた。餌打はそれに気づかず、階段を上って行った。
 餌打の足音が遠のいてから、そっと顔を出した。さっきの電話の相手は角重先生だった。二人の関係はまだ終わっていなかった。
 それを知った美鈴は口を押さえて、洗面所へ走った。洗面所で口の中を洗い、その場に座り込んでいたので、立ち上がって廊下を歩き出した。階段に着いたときには綺麗に掃除されていた。
 美鈴は教室に戻り、班の子達に謝ると、罰としてゴミを捨てに行くことになった。ゴミを捨てて、教室へ行こうとしたときに聞き覚えのある声が聞こえた。
 美鈴が気づかれないようにそっと覗くと、角重先生と古霜先生がいた。
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