この気持ちをあなたに伝えたい
　相手はかなり腹を立てていて、腕組をしている。

「あの・・・・・・」
「渉君がデートの誘いをしてくれないのはあんたが原因なんでしょ！？」

　餌打と最愛が恋人だと流れている噂を未だに信じている人達がいる。
　彼女にとって最愛は憎悪の対象でしかない。そのことを知って、最愛は溜息と一緒に暗い影も落とす。

「私、恋人なんていませんから」
「とんでもない女ね」
「話を聞いてください。違うんです！」

　否定しても彼女は最愛の話に耳を傾けてくれなかった。
　最愛がさっきと同じことを話そうとしたとき、頬に鋭い痛みが走り、最愛は顔を歪ませながら、頬を押さえる。

「見ていてイライラする・・・・・・」
「恋人じゃない・・・・・・本当に違う・・・・・・」

　最愛は恐怖で後退しながら、ひたすら否定する。

「私さ、聞かされたんだよ」
「・・・・・・何を？」
「あんた達がデートの約束までしていたことを・・・・・・」

　そんなことしていないので、ずっと否定し続けていても、最愛の言葉は彼女に届くことはなかった。
　彼女はひたすら最愛を罵倒してから、どこかへ走り去った。

「美鈴、ファンデーションを持っている？」
「持っているよ？　最愛！？」

　美鈴の鞄の中にある化粧ポーチを受け取り、ファンデーションで傷を隠した。最愛が鏡で確認すると、綺麗に隠れた。

「隠す前に手当てしないと・・・・・・」
「だって周囲の人達に気づかれたら、騒がれてしまうから・・・・・・」
「絆創膏は貼らないの？」

　そんなものを貼ったら、また多くの人達に騒がれてしまうので、貼らなかった。
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