この気持ちをあなたに伝えたい
 誰と話をしているのだろうか。知らない声で同一人物かと疑うくらいだった。

「また行くから。それにしても・・・・・・」

 礼雅が持っていたものは携帯電話以外に別のものもあった。それは最愛のキーホルダー。やっぱり礼雅の家で落としていた。
 会話が終わるまで待っていることにした最愛はその場を動かなかった。

「あのおちびちゃん、いつも俺が近くにいることに気づかないなんて」
「・・・・・・誰だろ?」

 誰のことを話しているのか、最初はわからなかった。

「普段から周囲にもう少し気を配ればいいのに・・・・・・。あの子を見ているといつも思う」

 声がさらに低くなり、ぞくりとして、手や足が震えだした。

「あれだと、いつ襲われてもおかしくない。仮に抵抗したとしても、どうってことない・・・・・・」

 身近にいる人ほど危ないことも電話の相手と話している。
 痛みで立てないのではない。恐怖や悲しみで声が出てこない上にその場に座ったままになってしまった。

「そろそろあの子のところへ行かないと。ん? 電話? そっか。わかった・・・・・・」
「あ・・・・・・」

 電話を切ってからボタンを押している。自分の携帯は今ポケットの中にあるので、足音を消して上の階へ行くと、携帯電話が鳴り、発信相手は礼雅だった。
 出るべきか悩んだが、鳴り止むことのない携帯を見つめて深呼吸してから電話に出た。

「・・・・・・もしもし」
『もしもし。最愛ちゃん?』
「うん・・・・・・」
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