この気持ちをあなたに伝えたい
 さっきと違って、礼雅の優しげな声に最愛は惑わされそうになった。

「礼雅お兄ちゃん、どうしたの?」

 動揺を悟られないように、最愛はいつものように話した。

『さっき、部屋で最愛ちゃんのキーホルダーを見つけたんだ。今から届けてもいい?』
「あ、えっと・・・・・・」

 あんな会話を聞いて、どんな顔で会えばいいのかわからない。一つだけわかるのは絶対に礼雅に会うことができない。

「今はちょっと・・・・・・」
『忙しい?』

 顔を合わせることができないので、嘘を吐いてしまった。

「今からお風呂に入るところだから・・・・・・」
『そうなの?』
「そう・・・・・・」

 最愛はそれを言うだけで精一杯だった。声が震えたように感じたが、礼雅は気づいていないのか、そのまま会話を続けた。

『じゃあ、明日届けようか? どうかな?』
「明日も朝から学校だよ?」
『そっか・・・・・・』

 明日は一限からなので、郵便受けに入れておくように頼んだ。

『郵便受け? うん。わかった。じゃあ、またね』
「うん。またね・・・・・・」

 電話を切ってから、全身の力が抜けた。最愛の様子がおかしかったことに気づいていなかったので、上手く話すことに成功した。
 これからどうすればいいのか、全くわからなかった。こんな形で裏切られるなんて思っても見なかったから。

「礼雅お兄ちゃん・・・・・・」
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