この気持ちをあなたに伝えたい
「どうかした? 楽しくなかった?」
「お母さんは私がどれを着ても同じことしか言ってくれないから、自分に似合うものがよくわからないの」
「あぁ、なるほど」

 愛娘だからどんな姿でも可愛く見えるものだ。幼い最愛はまだそのことを理解していない。

「礼雅お兄ちゃんはちゃんと何が良くて、何が悪いかを言ってくれるから嬉しいの!」
「ふふっ、そっか」

 最愛がマフィンを頬張りながら上機嫌になっていると、礼雅が最愛の口元を指先で拭ってくれた。

「美味しそうに食べるね。気に入った?」
「うん! だって、このマフィン好きだから!」
「買ってきて正解だね」

 ずっと笑顔でマフィンを食べているので、礼雅はもう一個のマフィンを最愛にあげることにした。

「もう一個食べる?」
「食べる! いいの!?」
「どうぞ」

 最愛にマフィンを渡すと、小さな口を一生懸命に動かして、マフィンを食べている。
 礼雅が学校の帰りにマフィンを買ってくれて、最愛が公園で遊んでいるときに家に招待されたので、いつものようにお邪魔している。

「マフィンの店、友達に教えてもらったんだ」
「そうなの?」
「うん」

 マフィン専門店があって、女の子に人気なのだということを最愛は初めて知った。

「知らなかった・・・・・・」
「俺も最近知った」

 そもそもマフィンの専門店があることに礼雅も最愛も驚いた。

「その店は結構遠いの?」
「少し遠いね・・・・・・」

 最愛はマフィン専門店を聞いたことがなかったので、場所も全然わからない。

「どのくらいかかるの?」
「学校の近くのバス停からバスに乗って、二十分かかるよ」
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