この気持ちをあなたに伝えたい
「すみません、よろしいですか?」
「何? どうかした?」

 礼雅が最愛を待っている間、近くの喫茶店に入ってカプチーノを飲んでいるときに店員に相席を頼まれた。
 店員と一緒にいるのはスタイルがいい少女が綺麗に化粧をしていて、媚びた表情で見てきた。それに対していつもの笑みを作って席を譲ることにした。彼女は嬉しそうに笑って座った後に店員に顔を向けて、フルーツたっぷりのスイーツを注文した。

「よくここへ来るのですか?」
「来るよ」

 来ることがわかった途端に彼女の表情が明るくなった。

「本当ですか!?」
「うん。広くて、リラックスできるからね」

 上目遣いで見上げる彼女を見ながら、礼雅は下手な芝居であることを感じていた。
 気づかれていないと思っている彼女は顔を赤らめながら、鞄の中から携帯を取り出した。

「あの、よろしかったら番号を交換しませんか? 私もここにときどき来るので・・・・・・」
「でも名前も知らない、君みたいな美人と一緒にいたら、彼氏に怒られるでしょ?」
「いえ、そんな・・・・・・」

 彼女は大袈裟に思い出したと言わんばかりの顔をしてから自己紹介をした。

「まだ名前を言っていませんでしたね。鴨狩雛、十八歳です。よろしくお願いします」
「俺は敷町礼雅。よろしく」

 自己紹介を終えると、雛はすぐにさっきのことを否定した。

「さっきの話ですけど、彼氏はいません」
「本当に?」
「はい。彼氏募集中なんです」

 じっと見つめてくる彼女を見たところ、自分に気があるということを悟った。

「実は今、携帯が壊れていて使えないんだ・・・・・・」
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