この気持ちをあなたに伝えたい
　辿り着いたときには最愛は横たわっていた。すぐに男を引き剥がすと、深香と芽実が最愛に駆け寄り、何度も呼びかけて最愛は意識を取り戻した。

「最愛、大丈夫？　私達がわかる？」

　芽実が殴られていない頬に触れて、最愛はそれを確かめるように自分の手で触れた。

「芽実、大丈夫。どうしてみんな・・・・・」
「那知上さんから事情を聞いたの。どうして無茶をするのよ！？」
「深香、落ち着いて。最愛の頬を手当てしないと」

　泣きながら怒っている深香を芽実は宥めている間、暴行を加えた本人は青ざめながら礼雅を見上げている。笑みを消し去った礼雅が歩み寄ると、伏貫は噛み合っていない歯をひたすら鳴らしていた。
　芽実が最愛の傷の手当てをした後に改めて伏貫から話を聞くことにした。

「どうしてこの子がこんな状態になっているの？」
「名波が本当は俺のことが好きでこいつが雛ちゃんを傷つけてばかりいるから、痛みを教えてやろうとしただけだ！」
「何よ、それ・・・・・・」

　最愛がすぐに否定すると、深香が最愛を庇うように前に出た。

「あんたはまだ騙されていたの！？　あの馬鹿娘に！」
「騙されてなんかいない！」
「本人に電話をすれば、本性を示してくれると思うんだけどな・・・・・・」

　最愛の呟きを礼雅は聞き逃さなかった。
　そして礼雅はポケットに手を入れて、あるものを出した。

「だったら、する？」
「これ、本人の番号」

　手にしているのは一枚の紙切れ。今日喫茶店でもらった電話番号が書かれた紙。
　礼雅が持っている紙を見て、その場にいた全員が驚いた。

「どうして持っているの！？」
「今日偶然会った。それより、ほら！」
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