この気持ちをあなたに伝えたい
家に帰る前のこと
 礼雅に病院へ連れて行かれて、どこも異常はないことがはっきりした。殴られた頬は大したことはなく、すぐに腫れが引いた。
 翌日に素直に真名の言うことを聞かなかったことと深香と芽実に今まで黙っていたことについて散々説教を受けた最愛はひたすら彼女達に謝ることしかできなかった。 
 あれから一ヶ月が経っていて、最愛は深香と二人で保の店に来ていた。

「本当にもう、まだ噂が流れているよ」
「かなり薄れている。噂を知ったときからそんなに広まっていなかったからな」

 最愛の噂はまだ完全に消えてはいなかった。
 もう少し経過したら、噂は完全になくなるだろう。

「しかし礼雅さんには驚いた。優しい口調だったのに、きつい口調になっていたから。大事にされているんだね」
「だ、大事?」
「だって大事じゃなかったら、あんなに必死になったりしないよ? ときめいたりしなかった?」

 両手を握って明るい笑顔を向けてきた。

「ときめかなかった。けど、うーん・・・・・・」
「最愛、可愛い」

 黙って赤くなっている最愛の頭を深香が撫でた。

「怪我が治って良かったね? 知ったときは驚いたよ」
「はい」

 保がグラスを拭きながら会話に加わった。

「ありがとうございます。もう全然痛くないですから」

 もう怯えながら帰り道を歩くことはなくなった。

「傷跡もすっかり消えたもんね」
「あぁ」

 エビフライをきちんと揚げているので、深香が食べる度にカリッといい音が響く。

「それにしてもこの店、美味しい上にかなりメニューが豊富だよね?」
「覚えるのが大変だな」

 ランチ、ドリンク、デザートメニューなど、多くのメニューがある。
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