この気持ちをあなたに伝えたい
 ストーカー事件解決後から数日経過したある日、家に帰ろうとしていたとき、雛が最愛を大学で待ち伏せをしていた。

「・・・・・・あそこにいる人って雛じゃない?」
「嘘だろ? ここからだと遠くてよく見えないな・・・・・・」
「絶対そうだよ! 間違いない!」

 深香が耳元で話しかけて正面を見るが、服装で女だとわかるくらい距離が離れていた。
 嫌そうな顔をしながら、歩く速度が遅くなった。

「それにしても・・・・・・こんなところまで何をしに来たんだ?」
「わかんない。最愛、別の道から行くことにしよう?」
「別の道って、逆戻りか?」

 そうすると、遠回りになるので、最愛は拒んだ。

「仕方がないよ。雛と会うと嫌なことしかないもの・・・・・・」
「わかった、行くか・・・・・・」
「やばっ! 気づかれた!」

 深香と話していると、雛がこちらを向いた。
 高いヒールの靴を履いて派手に音を鳴らしながら最愛の目の前まで向かって服に掴みかかった。

「いい加減にしてよ!」
「な、何がだ!?」

 怒っている理由がわからなかったので最愛は狼狽した。

「あんたさ、礼雅さんにちょっかいかけているでしょ!? いつも私が気に入った男はあんたと関係しているしさ!」
「何するのよ!? やめなさいよ!」

 意外な返答に最愛が目を丸くしていると、それに対して深香が雛の手を払ってから前に出て反論した。
 雛は深香のことを無視して、最愛に怒鳴りつけた。

「変な言いがかりをつけないで!」
「いつも邪魔することしかできないの!?」

 もちろんそんなつもりはない。
 そう言葉にしても、余計に喚き散らすだけだと冷静に考えた。
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