この気持ちをあなたに伝えたい
「いい加減はそっちでしょ!? あんたのせいで最愛がどれだけ傷ついたと思っているの!?」
「傷つけるためにしただけよ! もっとボロボロになってくれると思ったのに!」

 叫び声がまるで猫が黒板を引っ掻く音と似ていて、できることなら耳を塞ぎたかった。

「お前さ、何で彼のことを知っているんだ?」
「・・・・・・そうね、どこかで会ったの?」

 最愛に続いて深香も質問をぶつける。
 あの日からずっと気になっていたこと。頭に血が上っている雛は包み隠さず話した。

「先週、礼雅さんが大学の近くにある喫茶店で会ったわよ! 満席で困っていたら、彼が相席を許してくれたの! そのときに番号を渡したのよ!」
「会ってすぐに個人情報を教えるんだ・・・・・・」

 もう少し相手を知ろうとはしないのだろうか。

「なるほどな。それでか・・・・・・」
「そういうこと・・・・・・」

 礼雅がどうして雛の番号を知っていたのか、これではっきりとした。

「どうしてあんないい人の隣があんたなのよ!? 納得できない!」
「ちょっと声を小さくしてくれ・・・・・・」
「耳元で騒がないで!」

 あの日、喫茶店に入るとすぐに店員から席がないことを言われて、本当なら大声で文句を言いたかった。
 けれど別の店員が彼と相席になることを聞かされたときは怒りはすぐに忘れて、目の前の人物に心を奪われていた。
 こんなことは今まで一度もないことだった。
 容姿の良い男は何人もいて、その中から気に入った男や最愛に気がある男に歩み寄り、最愛の悪口を言って評価をとことん下げた。自分の言うことを聞いてくれたり、最愛を傷つける道具になってくれたらそれで満足する。
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