この気持ちをあなたに伝えたい
 同じことの繰り返しに嫌な気分になっていた。どんなに否定しても、激しく思い込みをしている雛は信用しなかった。

「どうやって誘惑したの? どんな方法で彼を騙しているの? 言いなさいよ!」
「人の話を聞かないな・・・・・・」
「雛の耳はまるで飾り物ね・・・・・・」

 雛は人の話に耳を貸すことなく、ひたすら言いたいことを言っている。

「彼が私に簡単に騙されてしまうような男だと本気で思っているのか? その発言は彼を侮辱していることと同じだよな?」

 そう言い返すと、苦虫を噛み潰したような顔をして黙った。

「嫌がらせや軽い恋愛ばかりしていたら、いつか倍になって返ってくる。それと本当に魅力ある人間になりたいのなら、自分の愚行を改めたらどうだ?」
「何よ! 黙って聞いていれば言いたい放題に言って!」

 平手打ちを食らわせようとした雛の手は最愛が避けたので当たることはなかった。それでも諦めの悪い雛は鞄で叩かれた。

「最愛! 大丈夫!?」
「大丈夫だ・・・・・・」

 大丈夫であることを伝えているものの、最愛は顔を顰めた。

「ひどいじゃない!!」
「本当に目障りな女ね。あんたにもやってやるわよ!」

 鞄を投げようとしたところ、近くを通りかかった警備員が走って止めてくれた。

「助けてください! 彼女に暴力を振るわれました!」
「ちょっと!」

 雛にとって屈辱だった。通りかかる人達に白い目で見られて、彼女が悪名として知られることは間違いない。羞恥心を顔に滲ませている雛に止めを刺すように言い放った。

「・・・・・・言っただろ? 悪いことをすれば、それ以上に悪いことが自分に返ってくる。少しは賢くなったか?」
「調子に乗らないでよ!」
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