この気持ちをあなたに伝えたい
 最愛の手が完全に止まり、窓の外を見つめ続けて、それ以上何も話さなかった。礼雅は最愛の両頬に手を伸ばし、そのまま引っ張った。

「おい! どういうつもりだ? やめろ!」
「面白いな。ハムスターみたいで・・・・・・」
「人の話を聞け!」

 最愛は礼雅の手を振り払い、周囲を見渡した。多くの人達はいるものの、食事に夢中になっていたり、別の方向を見ていたため、最愛と礼雅のやりとりを見ていなかった。
 突然、礼雅の指が伸びてきて、最愛の唇を拭き取られた。

「最愛、甘だれがついているぞ」
「それを先に言え。変なことをする前に・・・・・・」
「変なことではない」

 最愛がグラスを持ち上げると、中に入っていた水はすでになくなっていた。グラスを横に置き、ライスとサイコロステーキを交互に食べた。

「グラスを貸せ」
「いらないからいい・・・・・・」

 礼雅が最愛のグラスを取ろうとしたので、最愛はグラスを取ることができないようにさらに遠くへ置いた。

「水くらい注いでやるのに・・・・・・」
「喉が渇いていないからいいんだ」

 最後のサイコロステーキを食べ終えて、すぐにステーキハウスを出た。礼雅も金を払ってすぐに出てきた。

「ご馳走様でした」
「おう。腹が膨らんでいるんじゃないか?」
「ふ、膨らんでいない!」

 咄嗟に最愛はお腹を隠しながら、否定する。腕でお腹に触れると、少し膨らんでいた。上着を持っていないので、鞄でお腹を隠すと、礼雅が口元を緩めていた。

「これからどうする? どこかへ行きたいところはあるか?」
「そうだな・・・・・・薬局へ行かないか?」
「いいぜ」
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