俺は、危険な彼に恋をした。
新学期を迎えた、四月、春。
満天に咲き誇る桜並木道を自転車で通る。
青空の下、桜の花弁があったかい春風にそそられるように舞い散る。
街全体が、桜色で色鮮やかに彩っていた。
けど…
俺の目から見える景色は違った。
色を失った、モノクロのようだった。
「よっ!、洸おはよ一!」
「……優。」
学校へ到着し昇降口の下駄箱前で、上履きに履き替えしていると背後から肩をポンポン叩き元気良く俺に挨拶をしてきたのは良く知る人物、優だった。
「……はよっ。」
軽く挨拶を交わすと、俺はそそくさにその場を立ち去った。
「あ、洸っ…」
優は、直ぐに立ち去る俺の背中を悲しげな表情と共に呟く。
「…まだ引きずってんのかよ、」
それは、紛れもなく俺に向けられた言葉だった。
優が徐ろに呟いた言葉は、直ぐにその場を立ち去った俺には知る由もなかった。
(…ガラッ)
自分の教室へと行き、中に入ると、担任の先生が来るまでのホ一ムル一ムがはじまる前。
既に、学校へ来て居た生徒達が楽しく会話する声や、笑い声だったりが教室の中で賑わって居た。
そんな中、ざわざわした声をまるで掻き分けるように通り過ぎ、自分の席へと一直線に向かう俺。
窓際の1番後ろの隅の席。
その場所の席は今の俺にとって「居心地が良い」と思えた。
「ねぇ一この前の雑誌読んだ?」
「あれでしょ一?昨日、出たばかりの雑誌『delivery』!わたし、発売日と同時に買っちゃったんだよね!」
「あ、わたしも!いてもいらんなくて買っちゃった~」
「なあ一、昨日やってたドラマ見たか?ちょ一良くなかったか?次回気になるわ。」
「in.thumoroって、ドラマだったけか確か。」
「映画やるんだってな、それ。」
「ね、今日どうする?」
「チェリパラってお店の、スイーツがね凄く美味しくてね!」
「今日カラオケ行く一?」
「行こう行こう!誰誘う?」
皆、それぞれの話題で盛り上がる中…
俺は1人、窓の外を眺めて居た。
雨…降ってきそ一だな。