恋愛の神様

亜子がシャワーを使っている間、俺は水音を聞きながら携帯を見下ろしていた。


むー………。


今回の取引先は随分辺鄙な田舎にある。
近くには鄙びた温泉地。


「…………………。」


まーな。
いくらなんでも小鳥とクマにラブロマンスなんざ生まれるわきゃない。

そうはいっても、一応小鳥は女でクマは男なんだから、一回くらいなら血迷い事もないとは言い切れない。

なんつっても野山はあれでいて肉体関係肯定派らしいし?

恋愛には果敢で、セックスにも積極的で。

しかも抱けばその身体がいかに極上かは直ぐに分かる。

クマだって平常であればともかく、鄙びた温泉宿付近に蔓延るキャバクラなんかで浴びるように酒を煽った後なら、悪戯心で隣の女に手を出さんとも限んねーだろ。


野山が俺に靡くアレは、セックスに対するあくなき興味心だ。

だとしたらそのうち相手が俺じゃなくてもいい事に気づく。

多分、そのうち『他のセックスってどんなだろう』と、興味を移すに違いない。

そのタイミングで部長に押し倒されたら――――?


想像して俺は深っっっい溜息を吐いた。


………ヤベ。
俺って打たれ弱いかも………。


他の野郎と女取り合って、負けた事なんざねーけどな。

さすがの俺も部長相手には自信がない。

レベルが違うのか次元が違うのか、競って勝てる気がしねぇ……。


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