恋愛の神様
優しく言った俺に対し、電話口から返ってきたのは沈黙。
俺は些かむっとして口を尖らせた。
「……何ダヨ。俺に誘われちゃ迷惑だってか?」
『そ、そんなことは………!』
途端に野山は慌てた。
唇をかみしめるような一拍を置いて、ぽつっと呟く。
『……ただ、この間、怒らせてしまったみたいで…もう、声を掛けては頂けないんだろうなと思ってましたので……』
自嘲の様なその言葉が俺の良心をザリザリ撫でた。
ゴメン、チィちゃん、マジで。
傷つけるつもりじゃ……
なかったんだぜ?
「……んな事、思ってねーよ?今日はちゃんと待っててやるから俺ントコに帰っておいで。」
そういうと、開口一番ホラー映画の主役(幽霊)みたいな声を出していた女とは思えないほど元気に
―――まるで空に羽ばたく鳥みたいに溌剌とした返事で。
『……はいっ!』
青空に溶けるような笑顔まで目に浮かぶようで、俺は笑いながら、電話を切った。