恋愛の神様
掛け値なしの褒め言葉にひよ子はきょとんとし、次いで「えへへ」と照れくさそうに頬を赤らめた。
瞑らな瞳で俺を見上げ、にへっと笑う。
「そういう部長も大したものです。本当は、部下に仕事を押し付けるだけの稀代の怠け者かと思っておりましたが、素晴らしい仕事っぷりでした。今回、部長の手腕を間近で拝見させていただいた事、とても勉強になりました。」
………一々言う事にトゲがあるのはどうしたもんか。
そう思いつつ、素直な褒め言葉に不覚にも胸がジンときた。
あぁ、今野のオッサンの気持ちが痛いほど分かるぜ、チクショウ。
なんか我が子に『お仕事してるパパってカッコイー』て言われたみたいだ。
部下としても認めているが、やっぱ俺だって懐かれれば単純にカワイイと思う――――。
「よしっ!ひよ子!!俺をお父様と呼ぶ事を許してやるぞ!!!」
「はあ!?」
両手を広げていきなり大音響を放った俺にひよ子は飛び上がって不審そうに俺を見詰めた。
「いきなり……白昼夢でもご覧になられましたか?それと再三申し上げておりますが、ワタクシひよ子などという名ではございません。」
「あー、まったく冷てぇ。だが、その可愛くないところもまた愛し、だ。」
感極まった俺はひよ子を羽交絞めにして、頭をグリグリ撫でながら呵々大笑した。
「ひぇぇええ!ソレ、セクハラですよ!ちょっと色気に欠けますが列記としたセクハラですぅぅ!」
「こまけぇこと言うなよ。親と子の仲じゃねーか。」
「ワタクシの父にクマは要りません。」