恋愛の神様
ぶつぶつ言いながら髪の毛を手櫛で整えているひよ子に、ほほーん?と目を眇める。
「んじゃ、コイビト枠か?だが生憎とコイビトだって二人は要らんっつー性質だろが。」
悪戯にカマを掛けてみたが、どうも遠回し過ぎたか、理解出来ない様子だ。
この手の方面には滅法疎いらしい。
「これから男と逢引きってか?昨日の今日で、引きこもり確実かと思いきや朝から無駄に元気だし、一体どんな連絡が来たのやら。」
途端、ひよ子は縁日で売られている赤色ひよ子に様変わり。
「ぅおっ、男なんて、……か、彼氏なんて高級なモノではありませんよっ。ただ、お電話は、そのっ……仲互いが上手くおさまったようなので……」
ふふん。
やっぱ男から連絡あったんじゃねーか。
「ったく、お父ちゃんは碌でもねぇ男なんざ許さねーかンな。」
「…碌でもねぇー男じゃ……ありますけど。多分、部長好みですよ…」
「あぁ?」
「……いえ。なんでもありません。」
首を傾げる俺をきっぱり振り切るようにひよ子は途端に景気付いた。
「ワタクシの事より部長、ご自分の心配を為されたらいかがですか!?そのお歳になって一人身なんて寂し過ぎます。老後は一体どーなるんです?じっくりとっくり見れば男らしい精悍なお顔立ちをなさっているのですから、女の一人や二人、仕事モードでバリバリ捕獲してください。」
微妙にケナサレてんのかよ、俺は……