恋愛の神様
未だに互いを嫌っているわけじゃない、と思う。
少なくとも俺はない。
ただ、一緒にいなくても平気だと気づいてしまっただけだ。
絆があるからダイジョーブ、と思うのか、相手の存在がなくても平気、と思うのか
……分からないから執行猶予なんだ。
「あ。」
俺が不意に漏らした声に、ひよ子が小首を傾げて覗きこんでくる。
「そーいや、今日、オクサン誕生日だわ……」
すっかり忘れてた。
「そういうずぼらなトコロが見限られた要因なのでは?」
ひよ子はあくまでひよ子らしく平静に切って捨てた。
※
電車に揺られながら駅弁を二つ平らげて、最寄りの駅に到着した。
ひよ子には直帰を命じ、俺は会社に戻って仕事を片付けちゃうか、素直に帰るかでちょっと悩んだ。
空は曇天模様
―――こりゃ一雨きそうだし、今日は大人しく帰るかぁ。
と。
「部長!十五分、いえ、十分でイイのでココでお待ち下さい!!」
ひよ子が叫んだ。
オイオイ、ネギが突きだした非常用袋を背負った女が叫ぶなよ。