恋愛の神様

未だに互いを嫌っているわけじゃない、と思う。

少なくとも俺はない。

ただ、一緒にいなくても平気だと気づいてしまっただけだ。

絆があるからダイジョーブ、と思うのか、相手の存在がなくても平気、と思うのか

……分からないから執行猶予なんだ。


「あ。」


俺が不意に漏らした声に、ひよ子が小首を傾げて覗きこんでくる。


「そーいや、今日、オクサン誕生日だわ……」


すっかり忘れてた。


「そういうずぼらなトコロが見限られた要因なのでは?」


ひよ子はあくまでひよ子らしく平静に切って捨てた。











電車に揺られながら駅弁を二つ平らげて、最寄りの駅に到着した。

ひよ子には直帰を命じ、俺は会社に戻って仕事を片付けちゃうか、素直に帰るかでちょっと悩んだ。

空は曇天模様

―――こりゃ一雨きそうだし、今日は大人しく帰るかぁ。

と。


「部長!十五分、いえ、十分でイイのでココでお待ち下さい!!」


ひよ子が叫んだ。

オイオイ、ネギが突きだした非常用袋を背負った女が叫ぶなよ。



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